1月25日(火曜)
ティク・ナット・ハン師著
『微笑みを生きる』より
ティク・ナット・ハン師がお亡くなりになりました。
以下
「タンポポは私の微笑み」
子どもが笑う。大人が笑う。これはとても大切なことです。毎日の暮らしのなかで徴笑むことができたら、平和で幸せな気持ちですごせたならば、私たちだけでなくみんながその微笑みの恩恵に浴します。
本当にすばらしい生き方を知っていれば、微笑みながら一日をはじめることが、いかにすばらしいことかおわかりでしょう。微笑みは平和なこころと喜びの生活への決意と自覚の現われです。真の微笑みは気づきから生まれます。
朝目ざめるとすぐに微笑みを思いだすには、どうしたらよいでしょう。たとえば寝室の窓辺や天井に、何か思いださせるものを吊るしておいてはどうでしょうか。
小枝とか、木の葉、絵、あるいは何か気のきいた言葉でもよいでしょう。
こうして吊るしておけば、目をさましたときにすぐに気づきます。あなたが目ざめてすぐに微笑むことができるようになれば、もう何も吊るしておく必要はありません。
窓辺から聞こえてくる鳥のさえずり、窓からさしこむ日の光で微笑むことができます。
目ざめの微笑みから、こころしずかな気づきの一日がはじまります。
微笑んでいる人を見たら、すぐにこの人は気づきのなかにいるとわかります。
この微笑をどれだけたくさんの芸術家が、どれだけ多くの絵画や彫刻のなかに描いてきたでしょうか。
きっと製作中の画家や彫刻家の顔にも同じ微笑みが浮かんでいたはずです。安らかな微笑みを描くことができた画家が、怒りの表情で描いたなどと想像できるでしょうか。
モナリザは軽やかでかすかな微笑みを湛えています。どんなにかすかな微笑みでも、顔の筋肉を緩め心配ごとや疲れを一掃してくれます。唇に小さな董のような微笑みを浮かべたら不思議なほどにこころの安らぎと気づきが戻ってきます。微笑みが、なくしたと思いこんでいた平和なこころを呼び戻してくれるのです。
私たちの微笑みは自分自身や周囲の人々を幸せにします。家族に大金を遣って贈りものをしても、お金で買ったものはこの気づきや微笑みほどには大きな喜びを与えてくれません。この貴重なプレゼントにはお金がかからないのです。カリフォルニアでのリトリートのあとで、ある友人がこんな詩を書いてくれました。
私は微笑みをなくしていました
でも心配ありません
タンポポが微笑んでくれます
もしあなたが微笑みを忘れてしまっても、タンポポがあなたの代わりに微笑んでくれると気づくことができたら、まだそんなに絶望的ではありません。あなたにはまだ十分に、あなたのまわりで微笑んでいるものに気づく力が残っているからです。
ほんの一、二回意識して息をしてみてください。微笑みが戻ってきます。タンポポもあなたの仲間です。いつもそこにいて、こころからあなたのために微笑んでくれます。
気づいてみれば、あなたのまわりにあるものは何でも、あなたのために微笑んでくれます。
あなたはひとりぼっちではありません。あなたのまわりで、そして、あなた自身のなかで支えていてくれるものに、こころをひらくだけでよいのです。タンポポの微笑みに気づいた私の友人のように、あなたが自分自身の息に気づけば、きっと微笑みはあなたに戻ってきます。
ティク・ナット・ハン師著
『微笑みを生きる』より